『ジョン・ウィック』(2014)


 ロシアン・マフィアの若頭が車欲しさに男の家を襲撃する。手下とともに男を袋叩きに、うるさい飼い犬は始末して、まんまと69年式のマスタングBOSS429を自分のものにするが、持ち帰った車を一目見た途端組織の古株が血相を変え、ボスである父親さえも激怒する。車の持ち主の名はジョン・ウィック。かつて組織のために働いていたこともある伝説の殺し屋で、車と犬は妻を亡くしたばかりの失意の彼にとってかけがえのない存在だったのだ。最強の男ジョン・ウィックを怒らせてしまったことに戦慄するマフィアのボス。しかし自分の息子がやらかしてしまったことだ、もうやるしかない。というわけで、マフィア対ひとりの戦争が始まるのだった。

 犬は愛らしいし、車はかっこいいけれど、それだけではない。どちらもジョンにとって亡くしたばかりの妻の存在に通じる大切なものだった。犬は死期を悟った妻がこっそり手配していた新しい家族であり、車には裏社会からの引退を決意させるほど愛した妻との思い出が詰まっていた。妻を亡くし、彼女が遺したものさえも奪われてしまったジョンにとって、裏社会への帰還と復讐は自分自身を取り戻すための唯一の道だったのだ。

 キアヌ・リーブスの不吉な佇まいとスマートなアクションがいいのと、やっぱり漫画みたいな設定が魅力。殺し屋ばかりが集う高級ホテル、裏社会だけで流通する独自貨幣、独自のルール、あからさまな隠語……。それらをひたすら高級に、重厚に、格調高く描くので、文句なしにかっこいい。中学生の頃観たらより夢中になったことだろう。まあ当時も『コンスタンティン』に夢中だったので似たようなものだが。裏社会の世界観も天国地獄といった異界と置き換えられそうだ。どちらも不吉な顔つきのスウェーデン人が君臨しているし。ちなみに『コンスタンティン』のサタン、ピーター・ストーメアは二作目に登場するがその話はまた今度。