「DJヒロヒト」(高橋源一郎著/新潮社)
装画と扉のイラストを担当しました。P640超えで書かれるのは、昭和天皇と同時代の人々とのありえたかもしれない交流の物語を中心とした昭和史の不思議なリミックス。南方熊楠や森鴎外、乃木希典からウォルト・ディズニーまで、様々な人物がゲストのように現れ、映画やポップカルチャーも多数引用される、長い長いラジオ番組のような一冊。
覗き穴つきのカバーを外すと表1から表4までひと繋がりのイラストの全貌が現れます。熱帯生物研究所が置かれていたパラオのジャングルとラジオDJブースのイメージ。
イラストの仕上がりは、「のらくろ」が代表するようなレトロな漫画の質の低い印刷の雰囲気がコンセプト。限られた色数、大胆な版ズレ、目の粗いドットのトーンを再現した加工は、新潮社装丁室によるもの。ぼく自身はこの手の加工を習得しておらず、常にフラットなものを描くだけなので、この仕上がりはとてもうれしかったです。
まさに水木しげるの南方戦記ものの世界。描くにあたってもちろんそのあたりを読み返した。
本文扉は、輸出された日本製マッチ箱のようなイメージ。遊びで入れられる文字情報がいくつかあったので、それらしいものにできた。「Printed in Japan」が気に入っている。