また節目節目で思い出したように更新するようで嫌なのだが、またしても元旦である。なんかこう、年末はあと二日くらいあったらいいと感じてしまう。今回は特に年末最終週の数日で高熱を出してしまったので、もうちょっとあの「一年の深夜」感を長く感じたかった。
2023年は初頭から犬のポコの治療が始まり、ひと通り済んだあとも様子見、夏にかけて介護しつつも日常をおくり、それでも深夜の徘徊等の奇行がおさまらずに困っていたら、10月には死んでしまった。それから残りは急激な脱力でただただぼんやりと過ごしていたように思う。とにかく時間が緩み続けた。年が明けたからといってなにが変わるわけでもないと思うが、なにか少しでも意識から体にも影響が起こって、少しずつネジが巻かれていくといいと思っている。
とは言え収穫もあるにはあった。長らく仕事への対応のためにデジタル作画ばかりしてきたが、ようやく紙に描く感覚が取り戻せてきた。取り戻せたどころか、自分では前よりも上達しているようにさえ感じている。ポコの治療の進捗を絵日記として描いたのもプラスになった。身近なことを手早く描き出すというのはなによりも訓練になるのだろう。とにかく、容易に修正できないということを楽しめる段階にまで回復できたと思う。
久しぶりに(ほとんど10年振りくらいではないか)いろいろなペンやインクを試していく時間も楽しかった。決して答えが出ることはないが、少しでも今の自分の手になじむもの、描いていて気持ちがよいものを見つけられたときはうれしい。
結局ぼくは先の硬いペンを紙の上に走らせていくこと自体があまり得意ではないらしい。それを上達させることに時間を割いてもいいのだが、それがわかったのは、先がとても柔らかく、線に表情がつけられる上に塗りも容易にできるツールを再発見したからだ。筆ペンである。
だいたい初夏あたりまでは筆ペンを使ったと思う。とにかく手が疲れない。加減のコツを掴めば細かい部分を描くこともでき、一本でいろいろな強弱、表情がつけられる。ただひとつ、やはりカートリッジ式でインクを補充するペンとしての構造のため、描いたところ、塗ったところにあまり濃淡が出ないのが物足りないところだった。ペン画は均一な濃度で描くものだし、印刷などしたときにムラが出ないようにもなるのだが、ぼくは逆にムラや濃淡が欲しかった。それはおそらく長年自然で偶発的な滲みや濃淡の再現に限界があるデジタル環境で作業してきたことへの反動もあるかもしれない。しかし、アナログで描いているならそうした表情が出なければなにか物足りない。いや、均一な濃さで描いたペン画ならデジタルでも足りる、とは全然思わない。濃淡を出さないように描くアナログ画にももちろん意義はあるし、それにはより技術が求められよう。とりあえず、今のぼくとしてはできるだけそこに風合いを出したい。それに応えてくれたのは、普通の絵筆だった。
そういうわけで下半期はずっと小さな丸筆に黒系のアクリルガッシュをつけて描いていた。これがとても描きやすい。濃淡のコントロールもだいぶつけられるようになった。ターナーのアクリルガッシュか、アムステルダムのアクリリックかはそのときの気分次第、あるいは密閉タッパー内に残った絵の具の塊次第なのだが、どちらもそれぞれよさがあっていい。画材選びとその研究の時間は専門学校時代にもあるにはあったが、もう少し長い時間をかけたかった。授業外でも自分でやればよかったと思っている。まあ、今できたのだからいいのだろう。
とりあえずこのやり方を今年も続けられたらと思う。あと、今年は椅子に座って時に極力脚をくまないようにしたい。