『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)

 2014年の『GODZILLA ゴジラ』の続編であり、『キングコング: 髑髏島の巨神』を含めた「モンスターバース」シリーズとしては3作目。サンフランシスコの戦いの後、ゴジラが姿を消してから5年。世界各地で怪獣を研究する秘密機関モナークだったが、テロリストの襲撃により南極で管理していた氷塊が崩壊、そこに眠っていたモンスター・ゼロことキングギドラが覚醒する。それを待ち受けていたかのように姿を現わすゴジラ。かつて太古の地球で王座を争ったゴジラとギドラの宿命の対決に呼応するように、モスラやラドンをはじめ世界中で怪獣たち(タイタン)が目覚め、まさに怪獣大戦争の様相を呈す……。

 着ぐるみでないデジタルで描かれた怪獣たちは、作り物としての怪獣というよりは生き物というニュアンスが強い。なので、なんとなく「大きな動物」を見ているような気分だった。前作もそうだったけれど、ゴジラの妙に人間臭い表情がおもしろいし、今回はギドラの3つの頭がちょっとしたトリオ漫才みたいなやりとりをするのがよかった。真ん中がリーダー格(長男?)なのだろうとは思っていたが、それぞれに性格が出ているのも、細かい描写ができるからこそ。もちろんそれゆえに恐ろしさや残忍さみたいなものもよく出ていた。残忍さと言えば、大好きなサリー・ホーキンス扮するグレアム博士が、ギドラに食べられてしまうのはショックすぎた。ゴジラを応援する気持ちに熱が入るというものだ。

 怪獣としてはモスラが一番のお気に入り。日本のオリジナル版を子どもの頃観たときは、ゴジラ以上にインパクトが強く(色のせいだろうか)、東京タワーに繭を張るシーンも絵としてパワーを感じた。例の歌を歌うとモスラが来てしまうので、以後親が脅しで歌うのを怖がった。その歌も今回はかっこよくアレンジされて壮大なテーマとして流れる。テーマと言えば伊福部昭によるゴジラのテーマも真正面からしっかり使われていて胸が高鳴った。多少のアレンジはあるが、それもハリウッド式の盛り上がりがあってよかった。どれだけギドラがパワフルであろうと、この曲をバックにゴジラが大地を踏んで雄叫びを上げれば、誰が本当の王かは一目瞭然である。

 人間たちが皆どこかぶっ壊れているのも、よかった。怪獣プロレスのインパクトが強すぎて人間たちの行動や物語は荒唐無稽に見える?いやいや、そもそもあの世界はぶっ壊れているのでそれでいいのだ。怪獣の存在を平気で受け入れ、畏敬の念を込めてタイタンとか呼んじゃったりして、次から次へと降りかかる災難に対処して適応していく神経の図太さ。あれくらい狂った世界では全くおかしくない。むしろぶっ壊れていなきゃおかしい。そもそもそのぶっ壊れたひとたちのキャラがまたいい。芹沢博士とマディソンちゃん、あなたたち本当に怪獣が好きですね。「全ての生き物に敬意を払っている」という芹沢のセリフもよかったな。やっぱり怪獣は生き物なんだ。

 ところで、次回はついにゴジラとコングの対決が予定されているわけだけれど、宇宙から来た雷を吐くドラゴンでさえ敵わなかったゴジラ。体内に原子炉があって、熱核反応さえ起こしてしまうモンスター・キングに、一見大きいだけのゴリラがどう挑むのだろうか。それだけで気になってしまう。コングも40年間でなにか特殊な変貌を遂げているのだろうか。電気を帯びてパワーアップとか?しかし、バカにはできない。コングはただのコングではないのだ。彼もまた王、キングコングなのである。