ピーウィー・ハーマンの強烈なキャラクターで知られるポール・ルーベンスが亡くなったそうだ。エルヴァイラのカサンドラ・ピーターソンもそうだが(活躍時期もピーウィーと同じ)、ああいうキャラクターと完全に一体化したようなひとは年齢不詳感が強く、ルーベンスも70歳だったというのに驚きである。
ピーウィーがホストを務める番組「ピーウィーのプレイハウス」は原語版VHSを死ぬほど観た。字幕さえなかったが、言葉を超える圧倒的な楽しさがあり、その色彩とテンション、ユーモア、そして狂気に魅了された。子どもの頃のぼくはあの番組を窓にしてアメリカという国を見ていたのかもしれない。
ピーウィーの家ではあらゆるものが生き生きとしゃべる。ソファ、地球儀、床板、窓枠、合衆国の地図の形をした時計、テレビ、家電を寄せ集めて作ったロボット、なぜか住み着いているプテラノドンなど、そんな連中がいるからピーウィーは全く寂しくない。ピーウィーには人間の友達だってたくさんいる。彼と同じくらいのテンションでうまく均衡を保てる相手もいれば、彼の振る舞いに呆れたり、たしなめたりしながらも理解を寄せてくれる常人(非常に少数だが)もいる。ピーウィーは子どものように気分屋でわがままだが、同時に落ち込みやすい。周りの皆は彼が愉快でいいやつだとわかってくれているから、そういうときは励ましてくれる。素敵な家に仲間たち、友達もいて、大人なのに子どものような心を持っている。ぼくはそんなピーウィーを羨ましく思っていた。
思えばおもちゃに囲まれた部屋というヴィジョンも元はあのプレイハウスへの憧れだったのかもしれない。今でもあそこに住みたいと思っている。
ルーベンスの他のキャラクターもお気に入りばかりだ(と言っても見たことのある作品はごく一部なのだろう)。『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の小鬼ロック、ディズニーランドの旧「スター・ツアーズ」のパイロット、キャプテン・レックス(クローン・トルーパーではなく、正真正銘のキャプテン・レックスだ。東京ディズニーランドでは原語の声を聴く機会はなかったものの、同型のドロイドの声はその後のアニメなどでも担当している)、それから生まれたばかりの赤ん坊を水かきがあるという理由で下水に捨ててしまうゴッサムの名士コブルポット卿も忘れられない。
ポール・ルーベンス、そしてピーウィー・ハーマン、安らかに眠れ。
さようなら、ピーウィー。ライトスピードでサンディ・クローズを捕まえろ!