Minnie the Moocher (1932)

フライシャースタジオのベティちゃんの短編より。ベティちゃんとお友達(彼氏とされる場合も)の犬ビン坊が、迷い込んだ洞窟の中でたくさんのお化けたちと遭遇するというお話で、で、セイウチのお化けが歌って踊る合間に次々とお化けが登場するのがなんとも楽しい。子どもの頃は同時期に観た「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」のウギー・ブギーと感じが似ていると思って気に入っていたが、もちろんブギーの元ネタはこれであった(後年ティム・バートンのインタビュー集ではっきり言及していたのを読んだ)。我ながら鋭い子どもである。セイウチが歌っているのはキャブ・キャロウェイの代表曲「Minnie the Moocher」で、声を当てているのもキャロウェイなら、セイウチの振り付けも彼の実際の動きをトレースしているらしい。曲調や振り付けはもちろん、体型や四肢の感じなどもブギーはこのセイウチにかなり影響されているのが見た目からもわかる。「Minnie the Moocher」自体の詞の内容は大して気にしたことはないが、最初に聴いたのがこのアニメで、さらにはブギーのイメージに引っ張られているせいか、自分の中ではかっこよくも少し不気味な印象である。モノクロの画面の中で伸び伸びと動き回るお化けたちも素晴らしいが、セイウチの後ろでゆっくりと横にスクロールしていく洞窟の背景画もとてもいい。30年代に録音された半ばくぐもったその曲が、この暗くじめじめした洞窟の中で反響している音としてかえってリアルでさえあると思う。