30歳になる


とうとう30歳になった。25歳以降はなんだか数字が半端で、若いというほどでもなければ、中年というほどでもなかったので、どちらかと言えばようやく30になってすっきりしている。
毎年誕生日の時期は台風があったりして天気が悪いのだが、珍しく晴れていた(これが去年のディズニーランドのときだったらなあ)。それも手伝ってなんだか気持ちよく歳を取った気がする。思えば20歳の誕生日もしとしと雨が降っていた気がするのだが、まあ10月は黄昏の国というくらいだから、1年を1日に例えればだんだん日が暮れて暗くなりつつあるシーズンなのである。その暗さに安心することもある。
10年前にはもちろん今のそれなりに充足した日々など想像もしていなかった。不安と悩みが横たわってそれどころではなく、明るい展望があったとしてもそれは非常にぼんやりとしてディテールを欠いた「こうなったらいいな」程度の願望に過ぎなかった。イラストレーションの仕事をしている自分というのを漠然と想像できても(根拠のない自信には満ちていたので)、実際にこの8年ほどの間にやってきた仕事ひとつひとつのディテールは、全然想像もしなかったようなものばかりである。イラストの仕事を依頼されるという目標の先に、依頼されたものを描く上でさまざまな壁があるということにも、全然想像が及んでいなかったわけだ。
30代もより一層描けますように。