『シン・エヴァ』IMAXにて2回目

久しぶりになにかに夢中になるという感覚に浸かっていて楽しい。公開日に一回見たきり10日ほどの間延々と頭の中で反芻しながら、パンフレットから抜き出したシーンを絵に描いたりして長い余韻の中にあった。かなりいろいろな映像が思い出されて考えているだけで楽しかったが、果たしてIMAXで挑んだ2回目はそんな10日間を上書きしてあまりあるほど鮮明で強烈な映像だった。どんな内容かはもちろんわかっているが、それでも初めて観ているかのような感覚と言っても過言ではない。正直IMAX礼賛型の映画の評判というのは信用していないのだが、これは確かに通常の2Dスクリーンとは別物と呼びたくなるのはわかる。そしてもちろん別物ではない。そういうふうに簡単に別物と言い切ってしまえる評価が信用ならないわけである。
それはどうでもいいとして、視界がとにかく絵で埋められる。ある意味実写映画よりもアニメーションのほうがそういった没入感みたいなものは強いかもしれない。ましてや次から次へと新鮮で強い絵を見せてくれる作品なら尚更である。ほとんど無限に近い数のエヴァの大群が押し寄せてくるところなどは本当にあの空間に落っこちてしまったかのような具合でぐわあんとする。
そんな異常空間での戦いはもちろんだが、農村の風景もさらに強く響いてくる気がした。仮称アヤナミが住人に紛れて生活している数日間を静止画だけで見せるくだりなどは、初見だと動きがない分目を休ませるような気で眺めていたが、大間違いだった。ああいうところこそ巨大なスクリーンで観ると刺さってくる。軍手をはめた手が握る不恰好に丸まったキュウリだとか、子どもたちと一緒にケンスケの授業を受けているところだとか、大スクリーンで観る絵画のような感じで目が皿になった。自分が確かにあそこにいたような気さえする。別にそれは自分が同じような(全然違うのだが)農村の出だからというわけではなく、今現在の生活も含め、映し出されている光景と同じものがいくらでもそこかしこに見つかるような気がしてならないのだ。
ついでに大きな画面のせいか、2回目なせいかわからないが、田んぼが遠景になったところであちこちで細かく小さな水紋が動いているのに気づいた。オタマジャクシかなにかのためだろうけれど、そういうところに気づけるのもうれしい。あの農村の風景は、アニメで描かれがちな「必要以上に美しい田舎」みたいになっていないところが好きなところである。状況はとても特殊だが、その中の生活をできるだけリアルに描くため、そういったフィルターを通すことはしなかったのだろう。あれだけ「土の匂い」をストーリー的にも強調しているのなら、野山を美化しそうなものだが、そうしないところが素直にかっこいいのである。だって、綺麗すぎる田舎の景色からはきっと土の匂いはしないから。美しいどころか泥臭ささえあるあのあたりの描写は、そういったためだろうと思っている。本当ならああいう景色のところではそれほど空気がパキッと鮮明でないというのもある。少なくともぼくの過ごしてきたところのイメージだが。だからあれくらい泥臭くて、ぼんやりした感じがいちばん合っている。それに、それでも美しいと感じるシーンがあったのだから、その描写で成功しているというほかない。
そんなふうにイメージと考えが押し寄せてくるわけだから、観終わって帰ってきたらずっと頭が火照っていた。一年以上映画館に行っていなかったのに10日くらい空けて同じもの観に行っているのだから、そりゃ体も頭もびっくりするだろう。