簡単に振り返る

年が明けてしまったが、今年なのか去年なのか微妙な時間帯に簡単に振り返ってみると、個人的には結構忙しくてあっという間な感じだった。とにかくたくさん描いたものだ。春から夏頃までが特に大変で、それ以降は少し落ち着いてはいたが今に至るまでやはりなにかとかかりきりだった。もちろん生活のためには常に仕事が必要だが、それにしてもあまりずっと仕事ばかりだと自分からなにか作りたいものを考えることを忘れてしまう。こうしてポートフォリオを見返してみても、自主的に描いたものの少なさに驚く(描いたもの全てを載せているわけでもないが)。仕事であれだけ描いていれば仕方がないことだが、今年はもう少し能動的に活動できるようにしたい。

目の前の仕事に取り組むのでいっぱいいっぱいで、経験や技術は積み重ねられるものの、どうも表現手法が伸び悩んでいるというのが、一年を通して感じたことである。仕事ごとに出せる限りのものを出しているつもりだが、さらにもう少しよくできるのではないかと思うことは少なくない。自分の期待するイメージと実際の技術との間にズレが生じるときこそ自分が成長している最中であるということはなんとなくわかっているのだが、わかっていてももどかしさを感じずにはおれない。そしてこの場合そのズレを埋めるのに必要なのが、もう数段階進んだ表現手法なのだろうと思う。とにかく求められたものを描くだけでなく、求められたものをどう描くかを、もっと考える必要があるだろう。発想を鍛えなければならない。

数少ない作業環境の変化と言えば、新しく昇降式デスクと、液晶ペンタブレットを導入したことだ。前の机は座高に対して若干低かったので、座った状態で天板の高さが満足なところに調整できるだけでもだいぶ楽になったのだが、立ったまま作業ができる高さまで上げることで、ひとつの姿勢で体がかたまることを防げる。もっとも、ついつい座りっぱなしになってしまうのだが。しかし以前のような疲れを感じなくなった。

液晶タブレット、通称液タブの方はついこのあいだ、12月に入ってから使い出したのだが、本当によく言われているようにもっと前から使いたかったと思うほどの感動を覚えている。ペンタブ自体を使い始めて10年ほどになり、自分では相当慣れているつもりだったのだが、直に画面にペンを走らせる液タブに切り替えてみて、普通のペンタブがとても描きづらいものだったというのを痛感した。もちろん長い間助けられてきて、自分のキャリアはペンタブによる描画抜きでは語れないのだが、やはり手元に描いたものが前方の画面に現れるという空間的な距離、ラグはどうしても人間には違和感を拭いきれないものだったのだろう。うまく説明できているかわからないが、液タブはもっと体感的に描けるような気がするし、描いているもののサイズや画面の中の密度も掴みやすい。こちらもこれまで感じてきた疲れが一気に解消された。力を抜いて描くことができるようになったので、必要以上にかけていた筆圧も弱まり、手も楽になった。

意識や道具が整ったところで、より一層好きなように好きなだけ描いていきたいと思う。