ディズニーストア のウッディとバズ

お誕生日ディズニーパークからの帰り道、イクスピアリの中にある大きなディズニーストア で前から気になっていた『トイストーリー』のふたりをまとめて買った。とりあえず誕生日のトイはこれで決まり。『トイストーリー』はおもちゃが主人公なので、関連商品のおもちゃも劇中に登場する彼ら自身ということで、ほかの映画のグッズとはちょっと意味合いが違って、劇中の彼らそのものを手に入れるというような感覚で楽しい。これまでこの手の等身大グッズが出るタイミングというのは何度もあったわけだが(特に10年前の3作目のときに買わなかったのは惜しかった)、昨年4作目があったおかげでようやく自分で手にすることができた。

このキャラクターたちの等身大おもちゃといえば、1作目の頃からシンクウェイ(日本ではタカラトミーが代理)というメーカーが出していて(ミスター・ポテトヘッドやバービーなど映画以前から実際に存在していた物に関してはそれぞれのメーカーからそのまま出ている)、ぼくは1作目のタイミングで出たバズ・ライトイヤーだけはもらいもので持っていた。普通のバズとは違い、本来黄緑色の部分が黒、白い部分がクロムメッキになっている特殊なバージョンでかっこいいのだが、ウッディと並べるとなるとやはり通常版がびしっと合うということで、揃いで欲しかったのだ。由緒正しいシンクウェイもいいのだが、やや値段が高い(2体揃えるなら尚更かさむ)。それで、あるときディズニーストアを覗いたときにディズニーストア ブランドのものが出ていたことを知って、ずっと気になっていたのだ。造形はほとんど変わらず、機能としてはしゃべるセリフの数や種類がやや違う程度(ディズニーストアのほうがずっと少ない)。値段はそれぞれ3800円税別で、2体でやっとシンクウェイ版1体の値段を少し超える程度。もちろんよくよく観察するとシンクウェイよりも少しチープな感じもあるのだが、ぼくとしては全然申し分ない。しゃべるセリフの量など別に気にならない。お人形遊びでは自分でしゃべってきたからね。シンクウェイを選ぶ方が、もしかしたら王道かもしれないが、もう少し他のものを試してみたいというか、『トイストーリー』のものが少し欲しい、という程度なのでこれくらいでちょうどいいと思った次第。なによりディズニーパークの帰りにディズニーストア で買い物するというのが気分としてとてもいい。

まずウッディ。布で縫われたところが多いので安っぽさは結構際立つが、劇場の雰囲気は十分出ていて、なによりこの手に持ったときのくたっとなる感じがいい。顔もかわいい。ほんとは「おもちゃ」の状態なら口は閉じているのだが、かわいいからよしとしよう。劇中のようなおもちゃモードの表情だと少し不気味に思われるのだろうか。しかし1作目は不気味さもポイントだと思う。音声は英語でトム・ハンクスの声でしゃべるのだが、セリフのレパートリーが完全に4作目準拠で、やたらとフォーキー(4作目のキーキャラクター)絡みのセリフを発する(「君はゴミじゃない!」とか)。おもちゃとしてのウッディが欲しい身としては、キャラクターとしてのセリフではなくおもちゃとしての決まったセリフ(「おれのブーツにゃガラガラ蛇」とかのやつ、うろ覚え)を聞きたいのだが、前述のようにそのあたりはしゃべったらいいな程度なのでまあいいか(個体差かもしれないが背中の紐の接触が若干悪く声が出ないことも)。4作目はおもちゃとしてのしゃべる機能を奪われる話でもあるからこういう仕様なのかもしれない。ブーツの裏にあるのはボニーの名前で、これもシンクウェイ版ではアルファベットのシールが付属して自分の名前を入れられたりするのだが、あくまで4作目の関連商品なので仕方ない。ブーツの作りも若干安っぽく見えたが、調べるとシンクウェイ版と大して変わらないようなので、こんなところだろう。全体的には気に入っている。

本来ウッディが欲しく、ウッディが来るなら色違いでなく普通のバズも欲しいという感じでついでに近かったのだが、出来としてはバズのほうがかなりいいと思う。造形はやはり前から持っているシンクウェイ版とほとんど変わらない。若干プラスチックの質感が安っぽいが、やはり値段ゆえだし、これは90年代と今とではおもちゃ全般がそうなっている。シンクウェイでは関節の中に金属が入っていたくらいでだいぶ頑丈だったが、最新のシンクウェイ版もそうなのかどうかはちょっとわからない。ただその分こちらのバージョンは関節が柔らかく動かしやすいと思う。ボタン類は劇中同様全て押せて、ウッディに比べるとセリフの量も多く、なによりおもちゃとしてのバズのデフォルトのセリフになっている。左胸の赤いボタンで背中の翼が展開するのだが、この展開の仕方が、下側に縦向きに下がっていた翼が上にカーブして持ち上がる形で横に広がるという、つまり劇中と同じ展開の仕方をする。シンクウェイ版では翼がただ横向きに収納されていたものがそのまま飛び出すという形になっているので、これに関してはシンクウェイよりよくできている。そしてうれしいのはヘルメットの開閉が横のボタンでワンタッチで出来るところ。これもシンクウェイ版では手動だったので得点である。

手に取ってみるとウッディよりバズのほうがよくできているのだが、この違いは『トイストーリー』の源流にあるこのふたりの違いとして正しいものとも言える。バズのほうがハイテクな機能があって、わあすげえ!という印象を抱かせて当然なのである(その分ウッディには50年代に作られた貫禄、ヴィンテージ感がなければふたりは互角にならないのだが)。古いおもちゃと新しいおもちゃという違いを見せるのに、カウボーイと宇宙飛行士というモチーフにしたのは本当にナイスだと思う。新旧がわかりやすいし、なによりこのふたつはアメリカの子どもたちの遊びの変遷、ヒーローの変遷において象徴的な存在だったからだ。宇宙競争の激化や月面着陸の快挙によって、宇宙飛行士がそれまでヒーローだった西部劇のガンマンに取って変わったという史実的なムーブメントを、そのままアンディというひとりの少年が持っているおもちゃたちの交代劇に落とし込んだわけだ。

漫画「ピーナッツ」にとてもわかりやすいエピソードがある。おなじみチャーリー・ブラウンがカウボーイハットをかぶって座り込み、ため息をついていると、通りかかった子がどうしたのかと尋ねる。するとチャーリー・ブラウンが「みんな宇宙ごっこに夢中なんだ」というようなことを答え、彼が指し示した先ではほかの友達たちが金魚鉢ヘルメットをかぶってレーザーガンのおもちゃを撃ち合って遊んでいるというオチ。実際の漫画が手元にないので細かいところは違うかもしれないが、とにかく気の毒なチャーリー・ブラウンが例によって流行りに乗っかれずにひとりぼっちになっているという筋。この子どもたちの遊びの移り変わりがウッディとバズのバディ像へとつながっていくのだ。