「SPUR」2020年2月号

「SPUR」2020年2月号(集英社)
イラスト映画レビュー「銀幕リポート」第47回
『ティーンスピリット』

 エル・ファニングが歌唱を披露する『ティーンスピリット』を紹介しました。イギリスの離島で暮らしていたポーランド系移民のティーン少女が、オーディション番組「ティーンスピリット」への出場を通してスターを目指すお話。基本は王道的なサクセスストーリーだけど、エル・ファニングのキャラクターと、それからもちろんスピリットに満ちた歌が唯一無二の映画にしていると思う。田舎臭い荒削りなキャラクターの雰囲気がいい。島の農場での光景がめちゃくちゃ綺麗で、馬をはじめ動物の世話をしつつ旧式のiPodからくたびれたイヤホンで音楽に浸る姿からは、単純に「こんな田舎嫌だなあ」みたいな感情では片付けられない心境が伺える。満足はしていないけど、その景色を愛しているんだね。故郷を捨てて華やかな世界、厳しい世界、夢の世界へと歩み出す物語は多いけれど、育った原風景をちゃんと持ち続ける主人公には親しみが持てる。ワイヤレスイヤホンが欲しいなあと思っていたけれど、この映画観たらそういうしゃらくさい気持ちはおさまった。