24 :「おはなしして子ちゃん」
(藤野可織著/講談社)

 たとえば「アダムス・ファミリー2」における、キャンプ場でのネイティブ・アメリカンと白人様のお食事会(の劇)をウェンズデーがぶち壊しにした後、ブロンド白人ギャルをこらしめるとどめの一発にマッチを擦って火をつけた瞬間、高らかにアダムスのテーマが流れる。あのときの邪悪な高揚感に似たようなものを、この本を読みながら感じた。ブロンドギャルをこらしめるお話ではないけれど、「善良な人々」を戸惑わせ恐怖させる才能を持った人物が登場したり、今までそれほど注目されたこともなかったような「物」程度の存在だったものが突如怪物に変貌して逆襲してくるところなど、ウェンズデー・アダムスの邪悪な笑みが浮かんで来るようでとても楽しかった。

 ホルマリン漬けの動物はぼくもずいぶん恐いもの見たさで観察したことがある。個人的に動物の姿をしているものよりも、「眼球(牛)」というラベルが貼られたガラス円柱の中で異様に大きくてうつろな灰色の球体が浮かんでいるのが恐かった。あの誰も意識を向けず、誰からも手入れはおろか触れられることすらなく忘れ去られた容器の中に、ぼくがよく知っている世界のものとは別のものが潜んでいるのではないかと不気味に思ったものだ。

 同様の理由で藻に覆われてなにを飼っていたかわからなくなった古い水槽なども恐い。地元の民家の庭などにはだいたいあるもので、中を確認することすらなんだか気味が悪くて放置されがちな古い水槽。けれど、ときどき分厚い藻のベールの中で金魚なのかなんなのか、なにかがぬうっと動くのが見えるのだ。

(2015年7月9日)